はじまりは「家」ではなく、「土地」の相談でした

今回のご相談は、「そろそろ建て替えを考えたい」という一般的な家づくりの話ではなく、
土地の整理から始まりました。
ご夫婦とお子さん1人で暮らされていたご実家は、築45年ほどが経過し、
水道管の老朽化や地盤の影響もあり、建物の歪みや床の不陸も目立つ状態でした。




また敷地が広く、
「このまま管理していくのは正直大変になってきた」
というお気持ちも、率直にお話しくださいました。
分筆・造成・売却を含めた、現実的な計画づくり

敷地が広いため、
- どこに接道を設けるか
- 1区画あたりの適切な広さはどのくらいか
- 実際に買い手が付きやすい区画割とは
といった点を、お施主さんと一緒に検討しました。




不動産会社とも連携しながら、
「実際に売れる区画かどうか」という現実的な視点も大切にしています。
住みながら建てる。引越しは1回で済むように

計画の中で特に重視したのが、
お施主さんの負担をできるだけ減らすこと。
一般的には、
- 仮住まいへ引越し
- 新築完成後に再度引越し
と、2回の引越しが必要になるケースも多くあります。




今回は、
- 住みながら新築を建てる
- 新居へ引越し
- 旧宅を解体
- 残り区画の造成工事(2期工事)
という流れにすることで、
引越しは1回だけで済むよう計画しました。
旧宅の記憶を、新しい住まいへ

旧宅のアプローチに使われていた敷石は、
すべて撤去するのではなく、
新しい建物のアプローチに再利用しています。
長年、家族を迎えてきた場所の記憶を、
形を変えて新しい住まいへつなげる。
そんな小さな工夫も、この家づくりの一部です。
要望はシンプルに。「とにかく寒くない家」

新築のご要望として一番強かったのは、
「デザインは特にこだわらないので、とにかく寒くない、快適な家にしてほしい」
という一点でした。
見た目よりも、
日々の暮らしの快適さを最優先した家づくりです。
太陽光と将来の光熱費を見据えた屋根計画

屋根形状は、
- 一般的な切妻屋根
- 太陽光パネルを多く載せられる片流れ屋根
で検討を重ねました。
将来的な光熱費の高騰も踏まえ、
太陽光パネルをしっかり載せられる片流れ屋根を採用。
- 太陽光パネル容量:12.72kW
- パワコン:5.5kW+4.4kW
- 9.9kWシステム構成
とし、無理のないバランスで計画しています。
間取りで空気を動かす。特別な機械は使わない

耐震性とコストバランスを考え、建物は総2階をベースに考えていきました。
その結果、
- 1階は必要な部屋が集中
- 2階はスペースに余裕
が生まれたため、吹抜けを設ける計画としました。


北側の階段と南側の吹抜けを使い、
上下階の空気が自然に循環する間取りとしています。
エアコン2台で、家全体を快適に

空調は、特別な設備を使わず、
一般的なルームエアコンのみで計画しています。
- 主に冬の暖房用として:
1階リビングに10畳用エアコン1台 - 主に夏の冷房用:
2階の高い位置に10畳用エアコン1台
換気は第3種換気とし、
給気口をエアコンの近くに配置。
- 冬は冷たい外気が直接体に当たらない
- 夏は湿度の高い外気をすぐ除湿
と、第3種換気の弱点を間取りと配置で補っています。

住んでみて分かる、体感の違い

実際に住まわれてからの感想です。
「想像していた以上に寒くも暑くもなく快適で、しかも光熱費が以前より全然少なくて済むのは助かる。」
以前は灯油代も含めると光熱費の負担が大きかったそうですが、
現在は、
- 夏:
2階エアコンを24時間稼働しても電気代は月1万円前後 - 冬:
1階エアコンを朝晩に間欠運転する程度
日中は日射取得でエアコン不要な日も多く、
家の中では薄着で過ごせるとのこと。
「外に出て初めて寒さに気づく」
そんな住環境になっています。
性能について


| 断熱性能 | 断熱等級7(HEAT20 G3) UA値 0.25/ηAC値 1.1 |
| 省エネ性能 | BEI(再エネなし)0.58 BEI(再エネあり)0.30 |
| 気密性能 | C値 0.13〜0.18(完成時測定) |
| 耐震性能 | 耐震等級3(許容応力度計算)+制震テープ |
| その他 | ・長期優良住宅認定取得 ・省令準耐火構造(火災保険料軽減) |
この家づくりで一番大切にしたこと

この住まいで一番大切にしたのは、
スムーズな段取りと、将来にわたる価値です。
建物の性能や快適さはもちろん、
敷地を整理し、一部を売却することで、
結果的に地域全体の価値が高まるような計画を目指しました。
家単体ではなく、
「土地・暮らし・将来」を一体で考える。
そんな家づくりになっています。
建築概要
| エリア | 山梨県甲府市 |
| 工事種別 | 新築 |
| 構造 | 木造軸組工法(金物工法)+大型パネル |
| 耐震性能 | 耐震等級3(許容応力度計算)+制震テープ |
| 階数 | 2階建て |
| 延床面積 | 約34坪 |
| 家族構成 | 3人(ご夫婦+お子さま) |
| 太陽光発電 | 9.9kWシステム[パネル:12.72kW、パワコン9.9kW(5.5kW+4.4kW)] |
| 外壁 | 塗り壁(軽量モルタル下地・ジョリパッド仕上げ) |
| 窓 | LIXIL TW(南面ペア/東西北トリプル) |
| 竣工 | 2025年 |
