2026年9月7日、山梨県立図書館交流ルーム102で開催された、一般社団法人 山梨県木造住宅協会「住まラボ 第3回 外皮計算 基礎の『新評価方法』直前対策セミナー」に参加してきました。

今回のテーマは、住宅の省エネ性能を評価する「外皮計算」の中でも、基礎や土間床まわりから逃げる熱をどう評価するかという内容です。
少し専門的な話ですが、断熱性能を数値で確認しながら家づくりを行ううえでは、とても重要な部分です。2026年10月31日で従来の評価方法が廃止される予定となっているため、今回のセミナーでは新しい評価方法の考え方から、実際のWEBプログラムの操作まで学びました。
住宅の性能は、断熱材の厚さだけでは決まりません
住宅の断熱性能を表す指標として「UA値」という言葉を聞いたことがある方もいるかもしれません。
UA値は「外皮平均熱貫流率」と呼ばれ、屋根や天井、外壁、窓、床、基礎などから、どのくらい熱が逃げやすいかを住宅全体で平均した数値です。数値が小さいほど、外へ逃げる熱が少ない住宅ということになります。
ここで大切なのは、壁や窓だけを計算すればよいわけではないということです。
基礎断熱を採用する住宅では、基礎の立ち上がりや土間床の外周部などにも熱の逃げ道があります。こうした部分をどのように評価するかが、今回のセミナーの中心テーマでした。

2026年10月31日で従来の基礎評価方法が廃止へ
今回学んだ中で、まず押さえておきたいのが評価方法の切り替えです。
基礎の線熱貫流率については、これまで使われてきた旧評価方法が2026年10月31日で廃止され、以降の新規申請では新評価方法を使用することになります。

評価方法の適用は原則として申請日時点で判断されるため、今後設計する住宅では、新しい計算方法を前提に準備しておく必要があります。
一方で、旧評価方法ですでに評価を受けている案件については、設計変更などが生じた場合にも一定の経過措置があります。すべての既存案件を11月から一斉に計算し直す、という話ではありません。
制度が変わる時期ほど、「いつ設計したか」ではなく「どの時点の申請に、どの評価方法が適用されるのか」を確認することが重要だと感じました。
新評価方法では「土間床の外周部」と「基礎壁」を分けて考える
従来の方法では、土間床等の外周部からの熱損失と、一定範囲の基礎壁からの熱損失をまとめて評価する考え方が使われていました。
新しい評価方法では、この考え方が整理され、
- 土間床等の外周部から逃げる熱
- 基礎壁から逃げる熱
を分けて評価します。
この違いは計算上のルールだけのようにも見えますが、実際には「どこに断熱材を入れているのか」「どの範囲まで断熱しているのか」を、これまで以上に正しく把握する必要があります。
設計図に断熱材の記号を入れるだけではなく、現場で実際にどう納まるかまで理解していないと、正しい評価につながりません。
土間床外周部の線熱貫流率は3つの方法で評価
新評価方法では、土間床等の外周部の線熱貫流率を求める方法が大きく3つあります。
1.基礎形状によらない代表値を使う方法
最も簡単なのが、基礎の形状や断熱材の有無・施工位置によらず、土間床上端と地盤面の高さの差によって代表値を使う方法です。
一般的な住宅で、土間床上端が地盤面と同じか高く、高さの差が1m未満の場合には、線熱貫流率として0.99W/(m・K)を使うことができます。
計算が簡単で分かりやすい一方、実際に高性能な基礎断熱を施工していても、その違いが数値に反映されない場合があります。
2.早見表から選ぶ方法
2つ目は、基礎形状や断熱材の施工位置、断熱材の熱抵抗、水平に施工する長さなどを確認し、技術情報に掲載されている早見表から該当する値を選ぶ方法です。
基礎の断熱仕様をきちんと反映できるため、条件によっては代表値の0.99よりも小さな値を採用できます。
ただし、早見表には適用条件があります。
例えば、べた基礎の一部の早見表では根入れ深さ300mm以下、基礎壁幅120mm以上などの条件が定められています。表に数字があるから使うのではなく、まず自分たちの基礎がその表の適用範囲に入っているか確認することが必要です。
3.WEBプログラムで計算する方法
3つ目は、基礎の形状や断熱材の種類・厚さ・位置などをモデル化し、二次元伝熱計算によって線熱貫流率を求める方法です。
今回の後半では、一般社団法人 山梨県木造住宅協会 会長の中村伊伯さんから、このWEBプログラムの具体的な操作方法を教えていただきました。

WEBプログラムでは、実際の基礎を「モデル化」して考える
実習では、参加者がそれぞれパソコンを開き、実際に基礎のモデルを入力しました。
画面上では、土、コンクリート、室内、外気、断熱材などをセルごとに設定し、実際の基礎断面に近い形をつくっていきます。
入力する内容は、例えば次のようなものです。
- 基礎の幅や立ち上がり高さ
- 土間床の位置
- 地盤面(GL)の位置
- 断熱材の種類と熱伝導率
- 断熱材の厚さ
- 立ち上がり部分の断熱範囲
- 水平方向へ断熱材を延ばす長さ

実際に操作してみると、断熱材の位置や長さを少し変えるだけでも計算結果が変わります。
つまり、計算ソフトに数字を入れる前に「自分たちが現場でどんな基礎をつくっているのか」を正確に理解しておく必要があります。

WEBプログラムの計算結果をそのまま申請値にはできない点にも注意
今回の講義で特に注意が必要だと感じたのが、WEBプログラムで計算結果が出れば、その数値をそのまま外皮計算に使えるわけではないという点です。
建築研究所が公開している技術情報では、この計算方法を活用した値を使用する場合、当面の間は専門家または専門機関が認める範囲で用いることとされています。
セミナーでは、申請でWEBプログラムの計算値を採用する場合には、登録省エネ評価機関による「任意評定」が必要になることが説明されました。
そのため、通常の住宅設計では、
- 代表値を使う
- 適用条件を確認して早見表を使う
- 特殊な仕様や、さらに詳細な性能評価が必要な場合にWEBプログラムと任意評定を検討する
という使い分けが現実的になりそうです。
一方で、申請に直接使わない場合でも、このWEBプログラムには大きな意味があります。
断熱材の厚さや施工範囲を変えながら結果を比較できるため、「この断熱の入れ方は熱的にどうなのか」を検討する設計ツールとして活用できます。
高性能な断熱材を使うだけではなく、性能を正しく評価する
今回のセミナーを通じて改めて感じたのは、住宅性能は「良い材料を使えば終わり」ではないということです。
例えば、基礎に高性能な断熱材を施工していても、計算では一律の代表値0.99を使えば、その断熱の工夫がUA値には十分反映されないことがあります。
逆に、性能を良く見せるためだけに有利な数字を使えばよいわけでもありません。
実際の基礎形状と断熱の納まりを確認し、その仕様に合った評価方法を選ぶことが大切です。
設計上の数字と、現場で施工されるものが一致して初めて、住宅性能の数値に意味が出てきます。
省エネ計算と実際の現場を一致させることも大切
前半の講義は、一般社団法人 静岡県建築住宅まちづくりセンターの方から、新評価方法や審査上の注意点について説明していただきました。
その中では、完了検査時に、省エネ計算で申請した設備と実際に設置されている設備が異なり、検査が保留になる事例についても紹介されました。
特にエアコンなどの設備は、「設置する・しない」「どの性能の機種を使うか」が省エネ計算の条件になることがあります。
設計段階で計算した内容と、現場で実際に施工・設置した内容が違えば、必要に応じて変更手続きが必要になります。
これは基礎断熱についても同じです。
図面上では断熱材が入っていても、現場で位置や施工範囲が違えば、本来想定していた性能にはなりません。
山本建築工業では、設計・基礎・大工・電気・給排水まで住まい全体を見ながら施工しています。だからこそ、省エネ計算を単なる申請書類として扱うのではなく、図面と現場をつなぐための確認資料として活用していきたいと考えています。
制度が変わっても、家づくりの基本は変わらない
住宅の省エネ基準や評価方法は、今後も少しずつ変わっていきます。
今回のように計算方法が変わると、つい「新しい計算ソフトの使い方」に目が向きがちですが、本当に大切なのは、その計算が何を評価しているのかを理解することだと思います。
どこから熱が逃げるのか。
その熱を抑えるために、どこへ断熱材を入れるのか。
設計した断熱が、現場で本当にその通り施工されているのか。
そして、その結果をどのように数値として確認するのか。
制度や計算方法が変わっても、この流れは変わりません。
今回学んだ内容も今後の設計や基礎断熱の検討に反映しながら、数字だけではなく、実際の施工までつながった住宅性能をつくっていきたいと思います。
※本記事の制度・評価方法に関する記載は、2026年9月7日時点の資料およびセミナー内容をもとにしています。制度や技術情報は更新される場合がありますので、実際の申請時には国土交通省・建築研究所等の最新情報をご確認ください。

