2026年9月2日・3日、東京・日本橋のロイヤルパークホテルで開催された「JBN全国会員交流会2026 in 東京」に参加しました。
1日目は、建築行政の動向や建築分野の中長期的なあり方についての講演、パネルディスカッション、懇親会。2日目は、リフォーム、空調・換気、次世代の工務店経営をテーマとする三つの分科会を受講しました。
全国から集まった工務店の取り組みを知るとともに、以前お会いした方々と再会し、直接お話しできる機会にもなりました。普段はそれぞれの地域で仕事をしているからこそ、こうした場で持ち寄られる経験には、自分たちの仕事を見直す手がかりがあります。
今回の記事では、二日間の流れに沿って、発表で紹介された内容と、住まいづくりを考えるうえでのポイントを詳しくご紹介します。講演の逐語録ではなく、いただいた資料や当日のスライドをもとに整理した参加報告です。

1日目|建築のこれからを、少し長い時間軸で考える

建築行政の動向と、中長期ビジョン
今回の交流会のテーマは、「勝ち残るための進む道 ~中長期ビジョンの議論内容について~」でした。
1日目は、国土交通省による建築行政の最新動向についての講演に続き、松村秀一さんによる「中長期ビジョンの議論内容について」の講演が行われました。その後、パネルディスカッションへと進みました。

建築の仕事では、法律や制度への対応が欠かせません。ただ、制度の変更点を覚えることと、なぜそのような方向へ進んでいるのかを理解することは、少し違います。今回のように中長期の議論に触れる機会は、日々の実務を社会全体の動きの中で考える時間になります。
国土交通省でも、建築分野の中長期的なあり方について検討が進められています。個別の建物だけでなく、社会資本としての建築物や市街地の将来を考える議論です。会場で聞いた「中長期」という言葉にも、そのような広がりがあります。
住宅は、完成して引き渡した後にも、暮らしの場として使われ続けます。その間には、家族構成や暮らし方の変化、設備の更新、修繕、次の世代への引き継ぎなど、さまざまな節目があります。
建てる時点での性能や仕上がりを確かめることに加えて、使い続ける間にどのような支えが必要になるのか。地域の工務店として考えるべき仕事は、完成した瞬間だけでは捉えきれません。


講演とともに大切な、全国の工務店の皆さんとの交流
YouTubeで拝見していた丹羽さんとの出会い
会場では、名古屋のRigolo株式会社・丹羽隆応さんとも再会しました。
最初にお会いしたのは、昨年のJBN全国大会です。それ以前にYouTubeで拝見したことがあり、会場でお見かけして「見たことのある方だ」と思い、声をかけたことがきっかけでした。その際に情報交換をさせていただき、今年も参加されていたので、改めて声をかけてお話ししました。


仕事をしている地域が違えば、建物の条件や周囲の環境、お客様から寄せられる相談も同じではありません。だからこそ、他の地域の取り組みを聞くときには、方法だけを覚えるのではなく、その背景にも目を向けたいと思います。
何を課題として、どのように考えているのか。自分たちの地域に当てはめると、共通する部分と異なる部分はどこか。そのように考えながら話を聞くことが、情報交換を仕事に結びつけるうえで大切です。


2日目・分科会A|法改正後のリフォームで、工事前に何を確かめるか

実例を通して学ぶ、改修計画の進め方
2日目の最初は、「建築基準法改正の後のリフォームについて」をテーマにした分科会Aです。既存改修の実例や計画を通して、法改正後のリフォームをどのように進めるかが取り上げられました。
発表資料では、建築確認手続きを伴う改修事例や計画、既存建物の調査、図面の確認、行政などとの相談について紹介されていました。制度の説明だけでなく、実際の建物を前にしたときに何を確認するのかという、実務に近い内容です。
リフォームには、建物ごとに異なる前提があります。築年数だけでなく、構造のつくり方、過去の増改築、残っている資料、現状の傷みなどを踏まえて計画する必要があります。

すべてのリフォームが、同じ手続きになるわけではありません
制度の背景を補足すると、2025年4月の改正建築基準法の施行により、2階建て木造住宅などの大規模の修繕・模様替について、新たに建築確認手続きが必要になりました。
ここでいう「大規模」は、単に工事費が高い、工期が長いという意味ではありません。建築基準法で定める主要構造部の一種以上について、過半の修繕・模様替に当たるかなど、工事の内容に基づいて判断します。
国土交通省の説明では、キッチンやトイレなどの設備更新、手すりの設置といった工事は、大規模の修繕・模様替に該当する工事と区別されています。ただし、設備更新と同時に構造に関わる改修などを行う場合には、工事全体で確認しなければなりません。
「リフォームだから手続きはいらない」とも、「古い家を直すなら、どの工事でも建築確認が必要」とも、一括りにはできないということです。建物の規模と、どこをどの程度変えるかを整理し、判断が難しい場合には行政や審査機関に相談する必要があります。
既存図面と、実際の建物の状態を照らし合わせる
分科会で紹介された事例では、既存図面や構造に関する資料、現地での確認が、計画を進めるうえでの大切な要素になっていました。

図面があれば、建物を理解する手がかりになります。一方、過去の改修などによって現状と異なる部分がないか、照らし合わせることも必要です。資料が残っていることと、現在の状態が確認できていることは、同じではありません。
壁や天井の仕上げだけを見ても、その内側の状態までは分かりません。どの部分を調べれば、計画に必要な情報が得られるのか。確認できていることと、工事前に追加で調べることを分けておくことが、計画の土台になります。
記事を読んでくださる住まい手の方にとっても、新築時の図面や、これまでの改修資料を残しておく意味がここにあります。将来、家を直すときに、どのようにつくられ、どこに手を入れてきたかを説明する資料になります。
調査と工事の境目も、あらかじめ整理する
資料には、建物の状態を確認するための解体と、改修工事の着手との関係についても論点が示されていました。
内部の状態を知るために必要な調査であっても、その範囲や方法、手続きとの関係を事前に整理しておくことが重要です。「調べるためだから、どこまで解体してもよい」と単純に考えることはできません。

特に、建築確認が関係する計画では、何を確認し、どの段階で必要な相談や申請を行い、その後にどの工事へ進むかという順序が大切になります。お客様への工程説明にも、その準備の時間を含めて考える必要があります。
直した内容を記録し、次につなぐ
分科会では、建物の状態や改修の履歴を評価する取り組みも紹介されました。家の価値を、築年数という一つの情報だけで捉えず、現状や手を入れてきた内容も含めて考える視点です。

これは、改修すれば必ず売却価格が上がる、という意味ではありません。工事の履歴や調査の結果が分かることと、市場での価格が決まることは分けて考える必要があります。
そのうえで、どこを直したのか、どのような状態を確認したのかを残すことには意味があります。将来の点検や再改修、家族への引き継ぎの際に、建物を理解する手がかりを渡せるからです。
リフォームは、今の不便を直す仕事であると同時に、その家を次に使う時間へつなぐ仕事でもあります。 事前に調べ、計画し、施工し、その内容を残す。分科会Aでは、その一連の仕事を考えることができました。
分科会F|全館空調の「最適解」を、実例から考える
環境委員会の分科会Fは、「全館空調の最適解を探る」をテーマに、住宅性能や地域によって変わる空調・換気計画の実例が紹介されました。
発表されたのは、菊池組の菊池さん、JIN建築工房の小森さん、凰建設の森亨介さんです。設備の組み合わせ、夏の結露事例、実測をもとにした換気制御と、異なる角度から室内環境を考える内容でした。

三人の発表を並べてみると、共通するのは、機器を選ぶことだけで計画を終えない姿勢です。建物の条件、空気の流れ、湿気、施工の納まり、使い方まで含めて、実際の住み心地を考えていました。
菊池さんの発表|快適さと、長く使える仕組みを両立する
建物の性能と設備を、一緒に考える
菊池さんの発表では、断熱性能や日射への配慮と、冷暖房・換気の計画を組み合わせた取り組みが紹介されました。
空調の計画というと、どのメーカーのエアコンを何台設置するか、という話を思い浮かべるかもしれません。発表では、その前提になる建物の性能や、温度・湿度・空気の動きなどにも目が向けられていました。
設備を検討する際には、その設備が働く相手である建物を理解する必要があります。どのような空間に、どのような空気の経路を設け、どこを冷やし、どこを暖めるか。機器の能力と配置は、その計画の一部です。
菊池さんの実例でも、建物側の工夫と設備側の工夫が重ねて説明されていました。紹介された仕組みだけを切り取るのではなく、どういう住宅で成り立っている計画なのかを読むことが大切です。

壁掛けエアコンを組み合わせる実践
スライドでは、壁掛けエアコンを上下階に配置し、冷房と暖房で主な役割を持たせる考え方が紹介されていました。上階の機器を冷房の中心に、下階の機器を暖房の中心に据え、それぞれが補助も担う構成です。

ここで参考になるのは、「どの家でも同じ台数でよい」という結論ではありません。役割を分けながら、建物の中にどのように冷暖房を届けるかを考えている点です。
吹き出す場所だけでなく、空気が戻る道筋も含めて見ていく必要があります。機器のある場所と、実際に人が過ごす場所との関係を考えることが、全体を計画するという意味なのだと思います。
特定の機器や配置だけを再現しても、間取りや建物の性能、運転条件が違えば、同じ結果になるとは限りません。実例から学ぶときには、結論とともに前提条件も持ち帰る必要があります。
温度と湿度を、別々の課題として見る
菊池さんの発表では、夏の除湿についても説明がありました。室温を下げることと、空気中の水分を取り除くことを、合わせて考える内容です。

基本的な仕組みを補足すると、エアコンは、空気を冷たい熱交換器に触れさせ、水分を結露させて取り除くことで除湿します。冷房でも除湿は行われますが、室温の調整と湿度の調整が常に同じように進むわけではありません。
ダイキンの解説でも、温度を下げる冷房と、水分を取り除く除湿の目的が整理されています。住み心地を考えるときには、温度計の数字だけでなく、湿度にも目を向けることが必要です。
空気を動かす目的を明確にする
空気の流れに関するスライドには、空気をむやみに混ぜないという考え方も示されていました。どこに空気を送り、どこから戻すかという計画の中で、必要な流れをつくる実践です。

一方で、後の小森さんの発表には、外気と室内から戻る空気を混ぜたうえで処理する図もありました。この二つは、言葉だけを見て反対の考えだと判断するべきではありません。扱っている場所や目的が異なるためです。
室内の空気をどう届けるかと、設備に入る空気をどう整えるかは、別の検討になります。「混ぜる」「混ぜない」という短い言葉だけで覚えず、どの場所の、何を目的とした話なのかを確かめたいところです。
導入費用の先にある、修理と更新
菊池さんの発表で取り上げられていたもう一つの視点が、設備を長く使うための費用と仕組みです。設置するときの費用に加えて、運転にかかる費用、故障時の修理、将来の交換も論点になっていました。
住宅を使い続ける間には、設備の更新を考える時期があります。そのときに、どの部分を交換するのか、作業できる場所があるか、相談先や交換方法を把握できるかという点も、計画時から考えておきたいことです。
設備を増やしたり、複雑な仕組みにしたりすること自体が目的ではありません。必要な快適さを確保したうえで、住まい手が扱いやすく、維持していける形を探る。菊池さんの発表は、その判断を促す内容でした。

初期費用だけを抑えて必要な性能を削ることとも違います。建物と設備にどのように費用を配分し、将来まで含めて成り立つ計画にするか。快適さと維持管理を切り離さず考えることが大切だと受け止めています。
小森さんの発表|夏の外気と結露を、実際の事例から学ぶ
第三種換気と、外気の逆流が関係した事例
JIN建築工房の小森さんの発表は、夏の空調・換気に関する結露の事例が中心でした。主に第三種換気を採用した住宅で、夏の湿った外気の逆流などが関係するとされた事例が紹介されました。
第三種換気は、機械で室内の空気を排出し、給気口から自然に外気を取り入れる方式です。この説明は換気方式の基本であり、発表された不具合の原因を、それだけで説明できるものではありません。
予定した給気口から外気を取り入れることと、本来想定していない場所から空気が入ることは分けて考えなければなりません。どの経路で空気が入ったのか、何に触れたのか、機器はどのような状態だったのかという具体的な条件が重要です。
発表では、レンジフードや給排気口の周辺など、実際に症状が出た部分の写真が示されていました。設備の名称だけを見ても分からない問題を、現場の状態から考える内容でした。

冬だけでなく、夏にも結露を考える
結露というと、冬の窓につく水滴を思い浮かべる方も多いかもしれません。夏にも、湿った空気が冷たい部分に触れることで結露が生じます。冷たい飲み物を入れたコップの表面に水滴がつく現象も、その一例です。
住宅では、冷房で冷えた部分に湿った外気が接するなど、空気と表面温度の条件によって問題が起こります。小森さんの発表では、そのような状況を、設備まわりの具体例を通して考えることができました。
ここで大切なのは、水滴や汚れが見えている場所だけを見て、原因を決めつけないことです。水が出ている場所と、湿った空気が入り始めた場所が同じとは限りません。空気の経路も含めて確認する必要があります。
シミや水滴から、原因を一つに決めない
発表には、給排気口のまわりの汚れや、配管まわりの状態を示す写真もありました。気密処理、断熱の状態、空気の逆流、排水の状態など、確認する観点が示されていました。
写真で見えるのは、まず症状です。そこから原因を確かめるには、現地の状態や運転条件などを追加で調べる必要があります。スライドに可能性として示されたことまで、確定した原因として受け取らないようにしたいところです。

リフォームでも設備の不具合でも、原因を誤って捉えると、表面を直しても問題が残るおそれがあります。症状が現れた部分に加えて、その周辺や見えない経路を確認する考え方は、現場の仕事に共通しています。
配管の断熱、貫通部の処理、点検できる納まり
小森さんの事例では、配管の断熱や、配管などが通る部分の気密処理に関する説明もありました。機器本体に加えて、その周囲の納まりが室内環境に関わるという視点です。

完成した部屋を見ただけでは、壁の内部や機器の裏側にある配管の状態は分かりません。施工中にどの部分を確認し、完成後にはどこから点検できるようにするかまで、設計と現場でつなげて考える必要があります。

山本建築工業では、基礎・大工・電気・給排水を自社で施工する体制をとっています。建築と設備の取り合いは、その両方に目を向けて確認したい部分です。担当する範囲がつながっているからこそ、見落としがないか丁寧に確かめていく姿勢が必要だと考えています。
換気方式の優劣ではなく、計画全体を確かめる
今回の事例を、第三種換気を採用すると必ず結露する、という話にまとめることはできません。紹介された建物には、それぞれの条件があります。
反対に、別の換気方式を選べば、配管の断熱や空気の経路を考えなくてよくなるわけでもありません。設備の方式、建物の性能、納まり、運転を合わせて確認することが必要です。

不具合の事例を知る目的は、特定の方式への不安を大きくすることではなく、自分たちの計画や施工で確認すべき部分を具体的にすることです。小森さんの発表は、完成後に見える症状から、見えにくい設計・施工の条件へ目を向ける学びでした。
森さんの発表|測定して、暮らしに応じた運転を考える
温度・湿度・CO2濃度を、時間の変化で見る
凰建設の森亨介さんからは、実測結果をもとに、在室状況や室内の空気の状態に応じた換気制御の取り組みが紹介されました。
スライドには、温度、湿度、CO2濃度などの推移を示すグラフがありました。一つの時点の数値だけでなく、時間とともにどのように変わるかを見ることで、設備の運転と室内環境の関係を検討する実践です。

機器が動いていることと、意図した環境になっていることは、同じ確認ではありません。設備を設置した後の状態を測り、計画したことがどう現れているかを見ていく。その過程が発表されていました。

一定の風量と、空気の状態に応じた制御
発表では、一定の風量で動かす考え方に対して、空気の状態に応じて運転を考える視点が示されていました。人がいる時間といない時間など、暮らしの変化も関係する話です。
これは、単純に換気量を減らせばよい、という意味ではありません。建物に必要な換気を確保する前提で、測定結果や使用条件をどのように制御へ結びつけるかという検討です。

グラフや設定値を参考にするときにも、測定した住宅の条件や機器の構成を理解する必要があります。別の住宅へ数値だけを移して、同じ運転をすれば同じ結果が得られるとは限りません。
CO2濃度だけで、空気の状態をすべて説明しない
CO2濃度は、人の在室に伴う変化などを見る指標として活用されています。ただし、一つの指標だけで、住宅内のすべての空気の状態が分かるわけではありません。
温度や湿度、臭い、建材などから発生する物質への配慮といった論点は、区別して確認する必要があります。測る項目を増やすこと自体より、何を確かめるためにその数値を見るのかが重要です。
発表の設定値やグラフも、こうした検討の材料として読むことが大切です。住宅ごとの必要な換気条件を確認せずに、住まい手が換気を止めたり、大幅に減らしたりすることを勧める内容としては扱いません。
2024年、山梨で空調設計をご指導いただいた森さん
森さんには、2024年に山梨で開催していただいた住宅空調設計講座で、講師としてご指導いただきました。今回の全国大会でもお会いでき、写真をご一緒しました。
空調設計は、機器の名前を知ることだけではなく、熱や湿気、必要な能力、空気の流れなどを結びつけて考える分野です。講座で学んだことに、今回のような実践の紹介を重ねることで、設計と実際の運転との関係に目を向ける機会になります。

もう一枚は、2024年の空調講座の際に、甲府で撮影した写真です。今回の会場で撮影したものと並べると、以前の学びから続くつながりを振り返ることができます。

一度受講して終わりではなく、教わった方の取り組みをその後も伺えることは、学びを続けるうえでありがたい機会です。実例を知り、自分たちの設計や施工では何を確かめるべきか考える。その積み重ねを大切にしていきたいと思います。
分科会H|次世代経営者が知っておくべきこと、考えるべきこと
最後は、次世代について考える分科会です。
新建ハウジングの三浦祐成さんによる「次世代経営者が知っておくべきこと・考えるべきこと」の発表の後、パネルディスカッションへ進む流れでした。

三浦さんの発表では、事業承継、住宅市場の変化、住まいの価値、地域との関わり、人材育成など、多くの論点が示されました。工務店の経営の話ですが、その先にあるのは、地域で誰が住まいをつくり、守り続けていくかという問いです。

先代と同じ方法を続けることだけが、承継ではない
発表では、先代の時代と、今の次世代経営者が向き合う環境の違いが整理されていました。市場の状況、情報技術、採用、経営判断に使う情報など、会社を取り巻く条件が変わる中で何を考えるかという内容です。

事業を引き継ぐときには、会社の名前や仕事のやり方に加えて、これまで大切にしてきた考え方も受け取ります。一方、受け継いだ方法が、そのまま今の条件に合うとは限りません。
守るものと、見直すものを分けて考える。発表を住まいづくりに引き寄せると、お客様との信頼や丁寧な仕事を大切にしながら、情報の共有方法や人の育て方、仕事の進め方を考えることにつながります。
性能の数字と、暮らして感じる価値
三浦さんの発表には、住宅の性能や品質、価格などの数値で比較しやすい価値と、使いやすさ、心地よさ、美しさ、素材や庭との関係など、体験として感じる価値を考える内容がありました。

住宅性能を確認することは大切です。同時に、お客様が毎日過ごす家には、暮らし方に合う動線や、居場所の落ち着き、手に触れる素材の感覚など、数字だけでは伝えきれない要素もあります。
これは、性能を下げて雰囲気を優先するという話ではありません。確認できる性能を土台に、そこでどのような時間を過ごせるかまで考える視点です。
家づくりの説明でも、数値や仕様を並べた後に、それが日々の暮らしにどう関わるのかを伝える必要があります。性能の説明と生活の説明をつなぐことが、工務店の提案で大切になると考えています。
手の届く住まいを、複数の選択肢から考える
発表では、建築費や住宅市場の変化を背景に、住まいの取得や改修の選択肢を広く考える内容も示されました。新築注文住宅に加えて、規格型の住宅、中古住宅の改修、実家の改修、部分的な改修などが取り上げられていました。

資料に示された金額は、講演で考え方を説明するための例です。そのまま山梨での工事価格や、山本建築工業の見積額として扱うものではありません。
参考にしたいのは、予算に合わせて、ただ同じ計画を小さくしていくことだけが提案ではないという点です。新しく建てるのか、今ある家を直すのか、優先する場所から手を入れるのかという、計画の出発点も検討できます。
ただし、どの選択肢がよいかは、建物の状態や土地、暮らし方、予算などによって変わります。中古住宅であれば何でも安く済む、部分改修なら必要な課題がすべて解決する、といった結論にはできません。
ここで分科会Aの話ともつながります。今ある家を使う選択肢を提案するためには、その家をきちんと調べ、どのような改修が可能かを判断できることが必要です。
新築の受注から、住まいを長く支える関係へ
三浦さんのスライドには、家守り、改修、建て替え、実家のリノベーション、売却支援など、既存の住宅に関わるさまざまな仕事が示されていました。

これは、すべての工務店が、すべての事業を自社だけで始めるという意味ではありません。住まいに関わる相談を、どのようにつなぎ、必要な仕事に応えていくかを考える視点です。
お客様の暮らしは、住宅を取得した後も続きます。設備が古くなったり、使わなくなった部屋ができたり、家族の住み方が変わったりしたときに、相談できる相手がいることには意味があります。
工務店の仕事を、新しく建てる一回の契約だけで見ず、住まいを使い続ける時間の中で考える。既存住宅の活用という言葉を、暮らしに近い仕事として捉えるきっかけになりました。
「ド地元建築」と「チームド地元」
発表で示された言葉の一つが、「ド地元建築」「チームド地元」です。
スライドでは、地域の工務店、設計事務所、職人、素材をつくる人、住まい手などの関わりに加えて、地域の木材やものづくり、建物が重ねる時間にも目が向けられていました。
単に施工する地域が近いということにとどまらず、その場所に暮らす人、そこにあるもの、積み重なってきた時間を、建築の価値として考える内容です。

全国の事例を学ぶことと、地域に根ざして仕事をすることは、両立するものだと思います。他の地域の知恵を知ったうえで、自分たちの地域の条件や暮らしに合う形を考える。その往復が、地域工務店の学び方の一つではないでしょうか。
自社の力と、他の人の力をどう組み合わせるか
発表では、自前で何でも抱えることにとらわれず、パートナーとして協力する考え方も示されていました。

山本建築工業は自社施工を大切にしています。ただ、自社施工の体制があることと、外から学んだり、他の専門家と協力したりしなくてよいことは別です。
自分たちで責任を持って進める仕事を明確にしながら、必要な知識や技術には、社外の力も含めて向き合う。自社の得意なことを確かめることは、適切に協力するためにも大切です。
住まいづくりには、さまざまな分野が関わります。誰が何を判断し、どこを確認するのかを明確にして協力することが、お客様に対して責任のある仕事につながると考えています。
完成した家だけでなく、つくる過程を伝える
三浦さんの発表では、施工力、人との関係、仕事のプロセスにも焦点が当てられていました。家づくりの過程そのものにも、価値があるという考え方です。

完成写真からは、部屋の雰囲気や外観は伝わります。しかし、どのように下地をつくり、何を確認して仕上げたのかは、完成写真だけでは分かりません。
施工中の記録を伝えることは、仕事の進捗を知らせることに加えて、なぜその作業を行っているかを説明する機会にもなります。お客様が自分の家のつくられ方を理解する手がかりになります。

このブログでも、出来上がった状態に加えて、完成すると見えなくなる部分を伝えていきたいと考えています。工事の途中にある判断や確認を、専門的すぎない言葉で説明することも、家づくりを支える仕事の一つです。
人を育て、長く続けられる工務店へ
発表では、建築が好きな若者が仕事に向き合えること、仕事としての魅力や、長期的な経営を考えることも示されていました。

よい家をつくる技術があっても、それを担う人が育たなければ、将来へつなぐことはできません。一方で、経験を積む機会だけを用意すれば育つとも限らず、仕事の目的を理解し、相談しながら学べる環境を考える必要があります。
施工の手順を教えることと、なぜその手順が必要なのかを伝えること。その両方が、条件の異なる現場でも考えて仕事をする力につながると考えています。
また、発表では、規模の拡大だけを目標にしない工務店のあり方も紹介されていました。少人数でも、仕事の質や独自性を持ち、事業を継続できる形を考えるという方向です。

小さいこと自体が強みになるわけではありません。自分たちがどのような仕事を届け、誰に必要とされ、どのように続けていくのかを考える必要があります。地域のお客様を長く支えるためにも、技術と経営の両方に向き合うことが大切です。
発表の後は、パネルディスカッションへ
三浦さんの発表の後には、工務店の皆さんによるパネルディスカッションが行われました。講演で示された広い論点から、実際に経営や家づくりに携わる方々の話を伺う時間へと移りました。

発表の終盤には、地域の工務店同士が、ともにつくっていく関係を考える内容も示されていました。自分たちだけで完結させず、地域の人や技術とのつながりの中で、どのような役割を担うかという問いです。

全国から集まった場で、改めて地元の仕事を考える。次世代の分科会は、新しい経営手法だけを学ぶというより、これからも地域で住まいを支えるための、会社のあり方を考える時間でした。
二日間の学びを、日々の住まいづくりへ
調べること、設計すること、確かめることをつなぐ
分科会Aで扱われた既存建物の調査と、分科会Fで扱われた空調・換気の実測には、共通する姿勢があります。思い込みだけで判断せず、実際の状態を確かめることです。
リフォームであれば、既存の資料や現地の状態から計画の前提を把握する。空調・換気であれば、建物と設備の条件を整理し、運転した結果にも目を向ける。それぞれの確認が、次の判断につながります。
学びを、会社の仕事につなげる
全国の実例には、その地域や会社の条件があります。学んだ方法を、そのまま山梨の住宅に当てはめるのではなく、自分たちの現場では何が共通し、どこが違うのかを考える必要があります。
そこで得た視点を、設計や施工、社内での情報共有にどう結びつけるか。研修への参加を、参加したという記録だけで終わらせず、日々の仕事を考える材料として積み重ねていきたいと思います。
山本建築工業が大切にしているのは、「住まいづくりを究め、暮らしに感動と幸せを創造する」という想いです。
建物の性能を確かめ、見えなくなる部分まで丁寧に向き合い、人と技術を育てていく。その一つひとつが、地域で暮らす方々の住まいを支える仕事につながっています。
今回お話を伺った皆さん、交流させていただいた皆さんとのつながりを大切にしながら、これからも学びを重ね、山梨の住まいづくりに向き合っていきます。


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