洗濯物を外に干さず、短時間で乾かせる衣類乾燥機。
共働きのご家庭や、花粉・梅雨・冬場の洗濯に悩むご家庭にとって、衣類乾燥機はかなり心強い設備です。
住宅用の衣類乾燥機としては、リンナイのガス衣類乾燥機「乾太くん」が非常に人気です。実際に山本建築工業でも、これまで新築住宅で乾太くんを設置してきました。
そんな中、パナソニックから屋外排気式の電気衣類乾燥機「Solaire(ソレイル)」が発表されました。ソレイルは、200V電源を使う電気式の衣類乾燥機で、2026年11月上旬発売予定とされています。
今回は、乾太くん、パナソニックのソレイル、そしてハイアールのヒートポンプ式衣類乾燥機「FUWATO」を比較しながら、山本建築工業としての考え方をまとめてみたいと思います。
ただし、この記事でお伝えしたいのは、単純に「どの乾燥機が一番良いか」という話ではありません。
大切なのは、衣類乾燥機を家電としてだけでなく、住宅設備として考えることです。
特に、高気密高断熱住宅では、乾燥機の排気、給気、電源、太陽光発電、外壁貫通部の処理まで含めて計画する必要があります。
まず結論|現時点では乾太くんは強い。ただし将来対応まで考えたい
山本建築工業としての現時点での考えは、次の通りです。
乾燥スピードと実績を重視するなら、今でも乾太くんは非常に有力な選択肢です。
リンナイ公式サイトでは、乾太くんは6kgの洗濯物を約60分、9kgの洗濯物を約90分で乾燥できるとされています。
一方で、パナソニックのソレイルのように、200V電源を使う屋外排気式の電気衣類乾燥機が登場してきました。ソレイルは、屋外排気式と200V電源を採用することで、従来の電気衣類乾燥機より乾燥時間を短縮することを狙った製品です。
そのため、これからの新築住宅では、今どの乾燥機を付けるかだけでなく、10年後・15年後にどの乾燥機にも対応しやすいように計画しておくことが重要になると考えています。
特に、太陽光発電システムを採用し、乾太くんを設置する新築住宅では、将来ソレイルのような電気式乾燥機へ入れ替える可能性も見据えて、乾燥機まわりの専用回路や、200V化も視野に入れた電源計画をしておくべきだと考えています。
乾太くん・ソレイル・FUWATOの違い
まずは、それぞれの特徴を整理します。
| 製品 | 乾燥方式 | 主な特徴 | 住宅計画上のポイント |
|---|---|---|---|
| 乾太くん | ガス式・屋外排気 | 乾燥が速い。ふんわり仕上がりやすい。実績が多い。 | ガス配管、排湿管、給気計画が必要 |
| ソレイル | 電気式・屋外排気・200V | 電気式でありながら屋外排気式。太陽光発電や夜間電力との相性を考えやすい。 | 200V電源、排湿管、設置ルートの計画が必要 |
| FUWATO | 電気式・ヒートポンプ除湿式 | 100Vで使える。排気ダクト不要。9kg大容量。 | 排気工事は不要だが、設置スペース・排水・乾燥時間に注意 |
乾太くんとソレイルは、どちらも屋外へ排気するタイプです。
つまり、高気密住宅では、排気した分の空気をどこから入れるか、いわゆる給気の考え方が重要になります。
一方で、FUWATOはヒートポンプ除湿式で、排気ダクトを必要としないタイプです。ハイアール公式では、乾燥容量9kg、乾燥方式はヒートポンプ除湿式、電源は単相100V、乾燥時間は9kgで250分、6kgで180分とされています。
このためFUWATOは、新築時に住宅設備として最初から組み込むというより、リフォームや後付けで排気穴を開けにくい場合の選択肢として見た方が自然だと思います。
乾太くんの強み|やはり乾燥スピードは大きな魅力

乾太くんの一番の強みは、やはり乾燥の速さです。
6kgで約60分、9kgで約90分という乾燥時間は、日々の家事を考えると大きなメリットです。
特に、家族の人数が多いご家庭や、洗濯を1日に2回まわすようなご家庭では、乾燥機のスピードは暮らしやすさに直結します。
- 洗濯機をまわしている間に、前の洗濯物を乾燥できる。
- 夜に洗濯しても、翌朝には着られる。
- 天気や花粉、黄砂を気にしなくてよい。
こうしたメリットはかなり大きいです。
また、リンナイ公式では、乾太くんの1回あたりの乾燥コストについて、6kgで96円、9kgで149円という試算も出されています。ただし、この試算はLPG単価や電気料金などの前提条件があるため、実際の費用は契約しているガス料金や電気料金によって変わります。
そのため、乾太くんは「速い」「使いやすい」「満足度が高い」設備である一方で、ガス料金や給気計画まで含めて考える必要があります。
高気密住宅で見落としやすい、乾太くんの給気問題
乾太くんを高気密住宅に設置する場合、山本建築工業として特に大切だと考えているのが、給気の計画です。
乾太くんは、乾燥時に湿った空気を屋外へ排気します。
つまり、乾燥機が動いている間は、家の中の空気が外へ出ていきます。
高気密住宅では、家のすき間が少ないため、排気した分の空気が自然には入りにくくなります。その結果、室内が負圧になり、玄関ドアが重く感じたり、思わぬ場所から外気を引っ張ったり、換気バランスが乱れたりする可能性があります。
そのため山本建築工業では、乾太くんを設置する場合、乾燥機本体の近くに給気口を設けるように考えてきました。
ただし、給気口は単に付ければよいわけではありません。
- 冬場に冷たい外気が脱衣室に入りすぎないか。
- 乾太くん運転時だけ給気できる仕組みにできないか。
- レンジフードや浴室換気と同時に動いたとき、家全体の空気の流れはどうなるか。
ここまで考える必要があります。
山本建築工業では以前、乾太くんに合わせて連動給気口を作ってみた記事も公開しています。
乾燥機の問題は、機械本体だけでは完結しません。
高気密住宅では、乾燥機、換気、給気、排気、室内環境をセットで考える必要があります。
ソレイルの登場で変わる、これからの乾燥機計画

パナソニックのソレイルは、乾太くんをそのまま置き換える製品というより、電気式乾燥機の選択肢を広げる製品だと考えています。
ソレイルは、屋外排気式の電気衣類乾燥機です。
公式ページでは、200Vのパワーで効率よく乾燥できる排気式の衣類乾燥機として紹介されており、湿った空気を屋外に排出することで機体内部で除湿する必要がなく、200V仕様で効率的に乾燥できると説明されています。
また、パナソニックのニュースリリースでは、標準コース6kg乾燥時に約135分で乾燥可能とされています。
乾燥時間だけを見ると、乾太くんの方が速いです。
しかし、ソレイルの意味はそこだけではありません。
重要なのは、電気式で、200Vで、屋外排気式であるという点です。
山梨のように太陽光発電を活かしやすい地域では、電気式乾燥機は今後さらに現実的な選択肢になっていく可能性があります。
気象庁の平年値では、甲府の年間日照時間は2225.8時間とされています。
山本建築工業でも、新築住宅では太陽光発電システムをほぼ標準的に計画しています。
そう考えると、昼間に乾燥機を使えるご家庭では、太陽光発電の電気を自家消費するという考え方もできます。
特に、固定買取期間が終わった後や、売電より自家消費を重視したいご家庭では、電気式乾燥機の価値は今後高まるかもしれません。
ソレイルも排気式。だから給気問題は残る
ここで注意したいのは、ソレイルも屋外排気式だということです。
電気式だからといって、給気の問題がなくなるわけではありません。
パナソニック公式ページでも、ソレイルは機体内部の空気を排出するダクトが必要で、天井または壁に穴を開けて、ダクトを通して排気する必要があると説明されています。
つまり、ソレイルも高気密住宅に設置する場合は、乾太くんと同じように、排気に見合う給気をどう確保するかを考える必要があります。
ここは、メーカーさんにも今後ぜひ期待したい部分です。
高気密住宅が増えている今、排気だけでなく、給気側もダクトで計画できるようなオプションや、乾燥機の運転と連動して給気できる仕組みがあると、住宅側としてはかなり計画しやすくなります。
現状では、そうした仕組みが標準的に用意されているわけではないため、住宅側で給気計画をきちんと考える必要があります。
乾太くんと給気の関係については、実際に連動給気口を作ってみた記事でも詳しくまとめています。高気密住宅で乾太くんを検討している方は、こちらもあわせてご覧ください。

山本建築工業としては、太陽光+乾太くん採用住宅では将来対応を考える

この図で特に大切なのは、乾燥機本体だけでなく、排湿管・連動給気口・専用回路・将来の200V対応・外壁貫通部の気密防水処理まで、ひとつの計画として考えることです。
今回のソレイルの発表を見て、山本建築工業として改めて重要だと感じたのは、乾燥機まわりの将来対応です。
現時点では乾太くんを選ぶとしても、10年後・15年後には、ソレイルのような電気式乾燥機を選びたくなる可能性があります。
そのときに、壁や天井を壊して電源工事をやり直すのはもったいないです。
そのため山本建築工業では、太陽光発電システムを採用し、乾太くんを設置する新築住宅では、原則として乾燥機まわりの専用回路、または将来的な200V化も視野に入れた電源計画をしておく方向で考えています。
ここで大切なのは、単に「200Vコンセントを付ければよい」という話ではないことです。
- 分電盤の空き。
- 専用回路の考え方。
- 配線ルート。
- 将来の機器入れ替え時に使いやすい位置。
- 乾燥機本体の設置スペース。
- 排湿管のルート。
- 給気口の位置。
- メンテナンス性。
こうした部分を、新築時からまとめて考えておくことが大切です。
乾燥機は、あとから置く家電というより、最初から暮らしの中に組み込む住宅設備になってきていると感じます。
設置場所は、洗濯機と併設し家事動線を短くする
山本建築工業では、乾太くんを設置する場合、脱衣室やランドリースペースの近くで、洗濯機と併設する形を基本に考えています。
理由はシンプルです。
- 洗う。
- 乾かす。
- たたむ。
- しまう。
この流れをできるだけ短くした方が、毎日の家事が楽になるからです。
衣類乾燥機は、機械の性能だけでなく、置く場所によって満足度が大きく変わります。
- 洗濯機から乾燥機までの距離が短いこと。
- 乾いた衣類を一時的に置ける場所があること。
- タオルや下着、パジャマなどを近くに収納できること。
- 脱衣室が狭くなりすぎないこと。
- フィルター掃除や本体の入れ替えがしやすいこと。
こうしたことまで含めて計画すると、衣類乾燥機はより使いやすくなります。
排湿管は、できるだけ短く、シンプルに
乾太くんやソレイルのような屋外排気式の乾燥機では、排湿管のルートも重要です。
山本建築工業では、排湿管が複雑なルートにならないように、できるだけシンプルに計画します。
建物の外壁側に乾燥機を設置できる場合は、なるべく最短で外へ排気できるように考えます。
ただし、最短距離だけを優先すればよいわけではありません。
- 将来、本体を入れ替えるときに作業しやすいか。
- 排湿管まわりを点検しやすいか。
- 外部フードの位置がメンテナンスしやすいか。
- 隣地や窓の位置に対して、排気が迷惑にならないか。
こうしたことも大切です。
乾燥機は、湿気、熱、ほこりを含んだ空気を扱う設備です。
最初に動けばよいのではなく、長く安全に使える計画にしておく必要があります。
外壁貫通部は、防水と気密が大切
屋外排気式の乾燥機では、排湿管や給気口が外壁を貫通します。
ここは、工務店としてかなり大切にしている部分です。
外壁に穴を開けるということは、防水と気密の弱点になりやすいということです。
山本建築工業では、乾燥機の排湿管や給気口についても、エアコン配管、換気扇、給気口と同じように、外壁貫通部の気密処理を行うようにしています。
高気密高断熱住宅では、こうした小さな貫通部の処理が、住まい全体の性能に関わります。
目に見えない部分ですが、こういう部分こそ丁寧に施工することが大切です。
ランニングコストは、単純比較しすぎない方がよい
乾燥機を比較するとき、ランニングコストは気になるところです。
ただし、ここは単純に「ガスが安い」「電気が安い」とは言い切れません。
- 乾太くんの場合、LPガスか都市ガスかによって費用は変わります。
- LPガスでも、契約している会社や地域によって単価が違います。
- ソレイルのような電気式の場合、電気料金プラン、夜間電力、太陽光発電の自家消費、蓄電池の有無によって変わります。
- FUWATOのようなヒートポンプ式は省エネ性を期待できますが、乾燥時間は長くなります。
公式情報を見ると、リンナイは乾太くんの乾燥コストについて、LPGや電気料金の前提を示したうえで、6kgで96円、9kgで149円という試算を出しています。
パナソニックはソレイルについて、夜間電力や自家発電と組み合わせることでランニングコストの抑制が可能で、使用条件によっては都市ガスと同程度のコスト水準も見込めると説明しています。
ただし、実際のコストはご家庭ごとに変わります。
山本建築工業としては、ランニングコストだけで機種を決めるのではなく、次のように考えるのがよいと思います。
| 暮らし方・住宅条件 | 向いている可能性がある乾燥機 |
|---|---|
| とにかく乾燥スピードを重視したい | 乾太くん |
| 家族が多く、洗濯回数が多い | 乾太くん |
| オール電化で考えたい | ソレイル |
| 太陽光発電の電気を自家消費したい | ソレイル |
| 外壁に排気穴を開けにくい | FUWATO |
| リフォームで工事を少なくしたい | FUWATO |
| 高気密住宅で新築時からきちんと計画できる | 乾太くん、またはソレイル |
FUWATOは、後付けしやすい選択肢として魅力がある

FUWATOは、乾太くんやソレイルとは少し立ち位置が違います。
FUWATOはヒートポンプ除湿式の電気衣類乾燥機で、排気ダクトを必要としません。
ハイアール公式では、タンク排水とホース排水を選べるため、タンク排水であれば電源があれば設置可能とされています。
これは、リフォームや後付けでは大きなメリットです。
- 外壁に穴を開けたくない。
- 排気ダクトを通す場所がない。
- ガス配管が難しい。
- まずは家電として導入したい。
こうした場合には、FUWATOのような選択肢も十分に考えられます。
一方で、新築時に最初から計画するのであれば、乾燥時間、排水、設置スペース、収納計画まで含めて検討したいところです。
特に、FUWATOは9kg乾燥が可能な大容量タイプですが、その分、本体サイズや重量もあります。設置場所を後から考えるのではなく、置く場所、動線、排水、メンテナンススペースを事前に考えておくことが大切です。
まとめ|衣類乾燥機は、家電ではなく住宅設備として考える時代へ
乾太くん、ソレイル、FUWATO。
それぞれに良さがあります。
乾燥スピードと実績を重視するなら、乾太くんは今でも非常に有力です。
電気式で、太陽光発電やオール電化との相性まで考えるなら、ソレイルのような200V電気式乾燥機は今後注目される選択肢になっていくと思います。
外壁に排気穴を開けにくいリフォームや、工事を少なくしたい場合には、FUWATOのようなヒートポンプ式乾燥機も候補になります。
ただし、山本建築工業として一番お伝えしたいのは、どの機種が一番良いかではありません。
大切なのは、衣類乾燥機を住宅設備として考えることです。
- 高気密住宅では、排気に対する給気をどう確保するか。
- 太陽光発電を採用する家では、将来の電気式乾燥機まで見据えるか。
- 乾太くんを設置する場合でも、将来200V化できるように電源計画をしておくか。
- 排湿管は短く、シンプルで、メンテナンスしやすいか。
- 外壁貫通部の防水・気密処理は丁寧にできているか。
- 洗濯機、乾燥機、収納までの家事動線は使いやすいか。
ここまで含めて考えることで、乾燥機はより暮らしやすい設備になります。
山本建築工業では、これからの新築住宅では、乾燥機を単体で考えるのではなく、家事動線、換気計画、給気計画、太陽光発電、将来の設備更新まで含めて計画していきたいと考えています。
今は乾太くんを選ぶとしても、将来ソレイルのような電気式乾燥機を選ぶ時代が来るかもしれません。
だからこそ、新築時には「今使う設備」だけでなく、「将来の選択肢を残す設計」をしておくことが大切だと思います。


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