2026年7月28日、熊本県熊本地方を震源とする大きな地震が発生しました。
この地震は気象庁により「令和8年熊本地震」と命名され、熊本県宇城市と氷川町で最大震度7を観測しています。
被災された皆さまに、心よりお見舞い申し上げます。
今回の記事では、地震の被害状況を詳しく取り上げるのではなく、住まいをつくる側として、私たちが新築住宅の地震対策をどのように考えてきたかをお伝えします。
令和8年熊本地震で最大震度7を観測
気象庁の発表によると、令和8年熊本地震は2026年7月28日16時27分頃に発生しました。
震源は熊本県熊本地方、マグニチュードは7.1、震源の深さは約10kmとされています。
熊本県宇城市と氷川町で震度7を観測したほか、周辺の広い地域で震度6強や震度6弱の強い揺れとなりました。
熊本地方では、2016年4月にも「平成28年熊本地震」が発生しています。
一連の地震活動で二度の震度7が観測され、多くの建物が被害を受けました。それから10年を迎えた2026年に、再び熊本地方で震度7の地震が発生したことになります。
ただし、2016年の地震と今回の地震との関係については、私たちが判断できることではありません。専門機関から公表される情報を確認する必要があります。
山梨でも震度6弱の地震が発生しました
大きな地震は、遠い地域だけで起きるものではありません。
2026年6月26日には、山梨県東部・富士五湖を震源とするマグニチュード5.6の地震が発生しました。
富士河口湖町では最大震度6弱、大月市では震度5強、甲府市でも震度5弱を観測しています。
山梨県で家を建てる私たちにとっても、地震への備えは決して他人事ではありません。
地震がいつ、どこで、どの程度の規模で起きるかを正確に予測することはできません。だからこそ、新築時にできる対策を、地震が起きる前から考えておく必要があります。
2016年4月から全棟を耐震等級3へ
山本建築工業では、平成28年熊本地震が発生する以前から、新築住宅で長期優良住宅の認定を取得していました。
当時は、長期優良住宅の認定基準を満たす耐震等級2を基本としていました。
しかし、2016年4月に発生した熊本地震を受け、同年4月以降に設計する新築住宅から、全棟を耐震等級3とする方針に変更しました。
耐震等級3は、住宅性能表示制度における最高等級です。
等級1で想定される地震力の1.5倍の力に対して、建物が倒壊・崩壊しない程度の強さを確保する基準です。
ただし、耐震等級3だから地震で一切損傷しない、という意味ではありません。
耐震等級は、主に建物の倒壊や崩壊を防ぎ、人命を守るための構造躯体の強さを示すものです。
「耐震等級3相当」ではなく、認定された耐震等級3
耐震等級について調べていると、「耐震等級3相当」という表現を見かけることがあります。
耐震等級3相当は、設計者や施工会社が耐震等級3と同程度と判断しているものの、第三者機関による審査や正式な認定を受けていない場合があります。
山本建築工業の新築住宅は、耐震等級3相当ではありません。
全棟で長期優良住宅の認定を取得し、登録住宅性能評価機関による第三者審査を受けた、正式な耐震等級3です。
認定書類によって耐震等級3を確認できるため、所定の書類を保険会社へ提出することで、地震保険料の耐震等級割引50%の対象となります。
保険の契約内容や必要書類は保険会社によって確認が必要ですが、性能を設計者の自己判断だけで終わらせず、第三者が確認できる形で残すことも大切だと考えています。
構造計算の方法も段階的に見直しています
2016年4月以降、当初は品確法に基づく壁量計算によって耐震等級3を確認し、基礎や梁の断面については許容応力度計算を行っていました。
2022年以降は、新築住宅の建物全体について許容応力度計算を行い、耐震等級3を確認しています。
許容応力度計算では、地震や風、積雪などによって建物の各部分に生じる力を計算し、柱、梁、耐力壁、接合部、基礎などが安全な範囲に収まっているかを確認します。
単に耐力壁の量だけを増やすのではなく、建物の形状や間取り、壁の配置、荷重の流れなどを含め、一棟ごとに確認しています。
耐震等級3に制震テープを加える理由

山本建築工業では、2016年4月以降、耐震等級3に加えて、アイディールブレーン社製の「制震テープ」を新築全棟で採用しています。
ここで重要なのは、耐震等級3の構造計算に、制震テープの効果を見込んでいないことです。
制震テープがない状態で耐震等級3を成立させ、その上に構造上の余力として制震を加えています。
耐震と制震は、似ているようで役割が異なります。
- 耐震は、柱や梁、耐力壁などの強さによって地震力に抵抗する考え方
- 制震は、建物に入った揺れのエネルギーを吸収し、変形や損傷を抑える考え方
どちらか一方を選ぶのではなく、まず耐震等級3の構造を確保し、その上で制震を加える考え方です。
制震テープは壁の中で揺れを吸収します

制震テープは、高層ビルの制震ダンパーなどにも使われる粘弾性体を、木造住宅用の両面テープ状にした制震部材です。
木造住宅が地震で揺れると、柱や梁で組まれた構造体と、耐力面材との間にわずかなずれが生じます。
そのずれが生じる部分に制震テープを挟むことで、振動エネルギーの一部を熱エネルギーへ変換し、建物の揺れを抑える仕組みです。
アイディールブレーン社が公表している実物大振動実験では、所定の条件下で、階と階の間に生じる変形を最大80%低減した結果が示されています。
ただし、この数値はメーカーが行った実験条件での結果です。すべての住宅で一律に80%低減されることを保証するものではありません。
建物の大きさ、形状、間取り、施工範囲、地震動などによって結果は変わります。
外周部を中心に、建物全体へ分散して施工

当社では、外周部に施工する耐力面材や準耐力面材の部分を中心に、制震テープを施工しています。
建物の形状や耐力壁の配置によっては、内部の耐力面材にも施工します。
一か所に大きな制震装置を取り付けるのではなく、建物の各所へ分散して配置し、住宅全体で揺れを受け止める考え方です。
制震テープは完成後には壁の中へ隠れて見えなくなります。
だからこそ、貼り付ける位置、施工面の状態、テープの連続性、面材との密着などを確認しながら施工することが重要です。
製品を採用するだけではなく、設計どおりに施工されて初めて、その役割を期待できます。
地震対策は一つの部材だけでは完成しません
耐震等級3や制震テープは重要ですが、それだけで地震に強い家が完成するわけではありません。
新築住宅の地震対策は、次のような内容を一つの流れとして考える必要があります。
- 建築前の地盤調査
- 地盤の状態に応じた基礎計画
- 建物の形状と荷重の確認
- 柱や梁の断面確認
- 耐力壁の量と配置
- 建物の重心と剛心の偏り
- 柱、梁、土台をつなぐ接合金物
- 基礎の配筋とコンクリート
- 構造用面材の釘の種類と間隔
- 図面と現場が一致しているかの確認
計算上の性能が高くても、現場で図面どおりに施工されなければ、その性能を十分に発揮できません。
山本建築工業では、設計と現場管理、基礎工事、木工事などを一つの流れとして捉え、完成後には見えなくなる部分も自分たちで確認しながら施工しています。
地震対策を特別仕様にしない
耐震等級3と制震テープは、一部の高価格帯住宅だけに付ける特別仕様ではありません。
2016年4月以降、当社が建築するすべての新築住宅で標準としてきました。
地震が起きるかどうかによって、必要性が変わるものではないからです。
構造や壁の中の地震対策は、建物が完成してから簡単に追加したり、やり直したりすることができません。
新築時だからこそできる対策を、最初から住宅の基本性能として組み込むことが大切だと考えています。
安心して暮らし続けられる住まいを目指して
どれほど構造計算を行い、耐震や制震の対策を重ねても、「この家はどのような地震でも絶対に安全です」と言い切ることはできません。
地震の規模や揺れ方、地盤、建物の状態によって、受ける影響は異なります。
それでも、設計段階で確認できることを確認し、施工時に守るべきことを一つずつ積み重ねることで、地震による倒壊や損傷の可能性を少しでも下げることはできます。
私たちが目指しているのは、数値や製品だけを並べた家ではありません。
地震が起きたときに人命を守り、その後の暮らしへの影響をできるだけ小さくする住まいです。
山梨で新築住宅を検討される際は、間取りやデザインだけでなく、耐震等級の確認方法、第三者認定の有無、制震の位置づけ、実際の施工体制まで確認してみてください。
山本建築工業では、耐震等級3と制震テープを含め、住まいの構造や性能についても、できるだけ分かりやすくご説明しています。


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